分類:キー溝幅ゲージ

指針測微器による寸法測定

キー溝幅ゲージの測定部寸法がどのように仕上がっているかという寸法検証は、原則としては「精密測定の原理」ともいうべきものに立脚する。

例えば、IT7級の8mmの場合、その製作許容差幅(製作公差)は0.0024mmである。この製作許容差幅の範囲内のどこに仕上がっているかを判断しようとするならば、その1/10の0.00024mmの寸法分解能が保証された測定器で寸法測定しなければならず、あるいは、その1/5の0.00048mmの寸法分解能が保証されていないといけない。従って、最小分解能が0.0005mmである指針測微器でブロックゲージを寸法基準とする比較測長でないといけないという結論が自ずから出てくる。

指針測微器を使用する場合、最も注意しなければならないことは測定台の平面度である。ブロックゲージやワークの基準面と不断に摺り合わされるため、とかく損耗しやすい。ブロックゲージを測定台面上で密着させながら移動させた場合に、指針の表示が振れるようだと具合が悪い。念のために測定台の基準面をチェックして、損耗が認められるようであれば手直しする。
手直しの結果状態を検証するためには、オプチカルフラットを使用するのだが、ごく僅かに中央部が凸R上になっていることが望ましい。測定台面とオプチカルフラット面とがリンギングしてしまうようだと、却って具合が悪いだろう。

ワーク面に対する測定ポイントは、5点(外縁部4点+中央部1点)もしくは8点(外周部6点+中央部2点)とするのは、ブロックゲージの寸法検定例に準じるためであり(JIS B 7506)、実際には、ワークを測定台面上をスライドさせて指針の振れを読み取っていく。
この場合、外周部・外縁部の寸法値を検証するのは、ワーク面に対するラップ加工に際して「縁ダレ」を起こしていないかどうかを確認し、中央部の寸法値を検定するのは、ワーク加工面が凸R上に仕立て上がっている場合の、その寸法差を把握するためである。外周部・外縁部の寸法値がワークの製作公差での最小値を割り込んでおらず、中央部の寸法値がワークの製作公差での最大値を上回っていなければ、このワークの寸法値は、全体として、製作公差範囲内にあるという判断がなされるという次第である。しかしながら、ワーク面が凸R上に仕立て上がっているかどうかはオプチカルフラットで簡単に検証できるものであるから、そうならないようなハンドラップ技能を修得するというのがゲージ屋としての弁えなのである。

ハンドラップ技能というのは、ワーク面に対するラップ加工に際して、「縁ダレ」を生起させるとか凸R上に仕立て上がるとかの「病理」が生じ得るというような技法ではなくて、そうではなくて、ラップ加工面を凹R面に仕立て上げることのできる技法なのである。この点は、いわゆる「機械ラップ」では原理的に有り得ないことであるから、ハンドラップ技法の究極態の一つである。

注記→ハンドラップ技能では、ワーク面を凹R面に仕立て上げることが可能な技法であるということは半世紀以上も前の技能者間では理解されていたことで、その理解に基づいて、当時のヨハンソン社のブロックゲージのリンギングの強さについて、ごく僅かな凹R面に仕立て上げられているのではないか?と、リンギング現象についてのいわゆる「大気圧説」の論拠となったのである。こういう「歴史」を知る者は、もういないのだろうが。