分類:ステンレス鋼製ハサミゲージ

種類と仕様(肉厚用板ゲージ)

いわゆる「肉厚用板ゲージ」の場合に、特殊仕様の特殊性というものが明確になる。

ワーク(被検定物)がプレート(板)の場合、その板厚の検定は通常仕様のハサミゲージで事足りる。ただ、JISで規定しているハサミゲージの形状仕様というものは「軸径」を検定するという目的に対応したものであるから、ゲージの通り部と止まり部の長さについて必ずしも適切と言えない場合が出てくる。そのような場合には、適切にバランスさせるように定める。

ここで特定ユーザー向けに製作している「肉厚用板ゲージ」というのは、パイプの肉厚を検定するためのものである。
パイプの内側というのは凹Rになっているから、その凹Rの曲率に沿った凸Rにゲージ測定面が仕立て上げられていないと精確な寸法検証ができないという発想に立って、ゲージ測定部を凸R状(つまり、蒲鉾状)に仕立て上げられるべき事が求められる場合がある。このような測定部のR加工についての問題点は、以下のようになる。

①ゲージ測定部のR加工は、厳密に言えば、パイプ内径の曲率に一致したものであるべきことになるのだが、実際にはそのような曲率の計測は不可能であるから、パイプ内径よりも小さな曲率であれば足りるということになる。
つまり、ゲージ測定部の凸Rの頂点でおいてのみ寸法値と平行度が確保されていれば良く、その他の部分は単なる「逃がし」のための加工になる。
②ゲージ測定部の凸Rの頂点の寸法値と平行度というものは、ゲージ基準部とゲージの段差部とが精確に対向していないとワークの肉厚を精確に測定していることにはならないのだが、その対向関係を検証することはほとんど不可能である。ゲージ各部の対向関係にズレがあれば、ゲージとしては不適合となる。
③実際のゲージの仕立て上げに際しては、凸Rの頂点で寸法値とその平行度を実現するということはほとんど無理なことであるから、その凸R部分を通常のゲージ測定部の仕立て上げの方法で仕上げ、この時点ではゲージ測定面は平面になっていて、その寸法値と平行度は確保されていて、その後にそのゲージ仕立て面を残しながら凸Rになるように、その平面幅が限りなく狭小になるように仕立て直すということになる。

以上の事をを踏まえると、ゲージ測定部を必要な幅に切削して、ゲージ測定面の寸法値と平行度の検証を行い、最終的に、ゲージ測定面幅の調整を行うという方法が、等価であって、なおかつ、確実な方法であると言える。
パイプ内径の凹R面に対して、ゲージ測定面幅の大きさに応じた空隙ができるのだが、従ってこの点にこだわってゲージとして用をなさないという判断が下される向きもあるのだが、その空隙の寸法値をほとんど0(ゼロ)になるべきゲージ測定面幅は計算できるのであって、計算上2~3μmに留めるようにすれば実務上は問題にならない。言い替えると、この空隙問題はゲージの製作公差に吸収される。

写真のものは、以上の考え方に基づいて製作されてきている。

測定部の基準寸法はいずれも3mm以下のものであって、パイプ内径にゲージ測定部が入るように、ゲージの脚幅を調整している。
製作実績としては、ワークであるパイプの内径がφ6、基準寸法値として0.8mmが経験できている。

この仕様に基づくと、製作仕様の自由度が大きいため、例えば、通り寸法を上限都市止まり寸法を下限として、その間をテーパーで結ぶという仕様のゲージが製作される。つまり、通り寸法よりも小さく止まり寸法よりも大きいワークはもちろん合格品である訳なのだが、具体的に、どの程度の寸法で合格しているかをテーパー部分で読み取るものである。どの程度な寸法範囲でワークを製造するかに応じて、ゲージの仕様もいろいろと可能になる。