分類:よもやま話

ダイヤモンド砥粒を使う場合の定盤

 ゲージ屋の仕事として、ハサミゲージの製作に際してダイヤモンド砥粒を使う場合、砥粒を置く定盤と、ハンド・ラップを行うラップ工具との組み合わせが前提となる。
 この場合の定盤の役割というのは、①ラップ油とラップ砥粒をよく混和してラップ工具の面上に均等にラップ砥粒が分布するようにすること、②ラップ砥粒を固定させて、ラップ工具表面をラップ砥粒がよく「引っ掻いて」ラップ工具表面のラップ滓を除却し、併せて、ラップ砥粒がラップ工具面上に確実に保持されるようにすること、という点にあるわけなのだが、この場合、ラップ工具表面というのはラップ方法として「固定砥粒ラップ」用の工具となっていることに注意しておこう。

 右の写真は、よく使われていると思われる「ガラス定盤」。

 ガラスを使った場合、定盤上でダイヤモンド砥粒がよく保持されず、固定されないため、従って、ラップ工具面上での面性状の維持の効用があまり芳しいものとは言えない。

 これに対して、下の写真は石英の板。
 石英版を利用すると、ダイヤモンド砥粒を保持・固定する力が強く従って、ラップ工具面上に対する面性状の維持の効果も大きい。

 つまり、問題の所在は、ラップ工具面の面性状が、ハンド・ラップという作業においてどうあらねばならないかという観点から、定盤の物性が判断されないといけないのだが、その場合、ラップ工具の材質が必ずしも鋳物であることが必須条件になっているわけではない。

 細かな議論は省略するのだが、鋳物をラップ工具とする場合、WA砥粒で#4000~#6000程度が上限となり、ダイヤモンド砥粒の場合はほぼ3μm粒径が上限となって、それ以上に微細な砥粒は使えない。定盤の側も同じことが言えるわけだから、ダイヤモンド砥粒で1μm粒径の者を採用して鏡面ラップを目指そうとするならば、鋳物という素材は全くの役立たずになる。

 では、どのような素材が最も適切かということになるのだが、結論から言えば、ダイヤモンド砥粒がよく刺さり込んでそのまま固定され保持されるべき表面性状を有していること、という点に尽きる。
 ガラスの場合は、ダイヤモンド砥粒が刺さり込みがたく、石英の場合は刺さり込んで固定されやすいが、内部的に脈があったりして素材としての均一性に欠け、容易に砕けやすい。加工もかなり厄介なことになる。

ダイヤモンド砥粒を使う場合の定盤:図1

 

ダイヤモンド砥粒を使う場合の定盤:図2