分類:よもやま話

遊離砥粒ラップ/湿式の問題点

 大分以前の問題になりますが、焼き入れたダイス鋼について、WA砥粒#3000+鋳物製ラップ工具でラップ加工を試みたことがあります。
 もちろん、ラップ能力が不足しますから、なかなか摺り下ろしが出来ないわけですが、ある程度の回数を繰り返していくうちに、ワークの表面に「ピンホール」が生じてきます。これを消除するためにいっそう力を込めてラップしようとすれば、この「ピンホール」の数がいっそうワーク表面に多く発生してきますから、とりとめのないことになります。

 この原因が、実は、未だに分からない。
 ワーク表面に対して、その金属組織上の何かを「剥ぎ取る」ようなことになっているわけですが、その何を剥ぎ取ることになっているかが分からない。

 いずれにしろ、この方法では、ダイス鋼に対するラップ仕上げは出来ないという結果は明らかですから、この現象は「遊離砥粒ラップ/湿式」に特有な病理現象と結論づけました。
 ダイヤモンド砥粒とかの他の砥粒を使えばどうなるかは、やってみる意味はあるかも知れませんが、自分ではやっていません。
 ある研磨材のメーカーの方と話をした際に、「ダイス鋼のラップの場合にピンホールが出ませんか?」という指摘がされたものですから、かなり一般的に生じる現象のようです。

 もう一つの経験は、超硬材に対するダイヤモンド砥粒ラップを試みた際の問題。
 超硬材と一言で言っても、いろいろとバリエーションがあって、自分が試みた超硬材がどのようなものであったか具体的にその種類を特定することは出来ませんが。

 1μm粒径のダイヤモンド砥粒を使っての湿式ラップに際して、そのワーク表面をボロボロと崩していくわけです。つまり、超硬材というのは焼結材ですから、超硬粒子を結合させている結合材に対してダイヤモンド砥粒が作用してワーク表面を突き崩していくわけです。
 超硬粒子は、言うまでもなく極めて硬いものですが、結合材はそれに比較すれば極めて柔弱なものですから、どんどんと超硬粒子をばらけさせていきます。
 1μm粒径のダイヤモンド砥粒でワーク表面を突き崩して、次に、1μm以上の大きな粒径のもの、もしくは、例えば0.5μm粒径といった微細な粒径のものを使えば、超硬粒子に対してラップしていくことになりますから、綺麗な鏡面になっていくわけです。

 この技法を巧く使えば、超硬部分の仕上げ代が多少大きなものであっても、かなり簡単に寸法仕上げが可能になるということを意味します。

 現状では、ダイヤモンド砥粒を使ってのラップ作業では、3μm粒径が限界であるとか、2μm粒径を使っているとかの話はよく聞きますが、0.5μmないし1μm粒径を使いこなせるようにすれば、超硬材のラップ加工というのはかなり容易なものとなるだろうと思えます。

 同じことは、セラミック製ゲージに対するラップ加工でも言えるわけです。

 固定砥粒ラップではこういう操作は不可能です。
 超硬材ないしセラミックスに対するラップ加工の場合は、遊離砥粒ラップ/湿式という技法が極めて有効な作業となります。