分類:ハサミゲージの仕様

ハサミゲージの防錆

ここで主に論述するのは「メッキ処理」の問題である。
一般的に採用可能なメッキ処理の種類として、ニッケルメッキ、クロムメッキ、硬質クロムメッキ等が
指摘できる。

ニッケルメッキの場合、年月の経過によりメッキの光輝性が失われるということがあり、また、メッキ層が軟らかなものであるために傷つきやすいという欠点がある。
しかしながら、無電解ニッケルメッキをベースにその硬度を高める処理が開発された。その硬度は硬質クロムメッキに比べて遜色ない程なのだが、その硬化処理に際して焼き戻し温度以上の温度に長時間晒されるため、ゲージ本体に焼き入れ処理をしていた場合、その焼き入れ硬度というものは意味をなさなくなってしまう。また、無電解ニッケルメッキのメッキ層の厚さの均等性や厚さ寸法のコントロール精度については、ゲージ製作精度を下回るものであるから、メッキ処理だけでゲージを完成させるということは望み得ないことになる。

クロムメッキの場合は、常温メッキであるから、ゲージの焼き入れ硬度が無に帰してしまうということはない。従前は、先ず銅メッキを下地に行い、次いでニッケルメッキを行い、最後にクロムメッキをして完成するという手順だったらしいのだが、現在は、銅メッキを下地に行うことはなく、ダブル・ニッケルメッキの上をクロムメッキするという方法によって、メッキ層全体の厚さの均一性が保たれるように考慮されている。
メッキ処理をした場合、ゲージの測定面ではそのメッキ層を除却して寸法仕上げがなされるわけだから、ゲージ測定面は素材それ自体の表面であって、従って防錆については無防備であるということは言える。ただ、ゲージ全体の発錆の危険ということは解決されるわけだから、ゲージ測定部の部分だけの防錆に注意を振り向けるということになる。
当方で、メッキ処理を行う場合というのは、基準寸法100mm以上のハサミゲージの場合で、その際には「サンド・ブラスト処理」を前処理としてなされるように手配している。
「サンド・ブラスト処理」というのは、ワーク表面に研磨砥粒を吹き付けて凹凸を形成させる処理なのだが、これによってメッキ層とゲージ母材との間の密着性を高め、あるいはまた、ゲージを扱う場合の「滑り」が生起しにくいものになるよう心掛けている。

硬質クロムメッキも、この場合はクロム単層メッキなのだが、同様にゲージ測定部のメッキ層は除却される。
昔、同業他社さんの製作に係るゲージで、ゲージ測定部にメッキ層を残した仕立て上げがなされている例を見たことがある。
この場合は、メッキ層の厚みを事前に考量して一旦寸法仕上げを行い、メッキ後に、メッキ層厚みを割り込むことがないように寸法仕上げをするという、つまり、寸法仕上げを2回するという方法である。硬質クロムメッキ層をWA砥石・砥粒でラップするというのはかなり困難な作業であり、また、メッキ業者さんの方でも期待通りのメッキ厚のコントロールができるか否かが決定的な決め手になるから、委託先の選定が難しい。
あれやこれやで、出来上がったゲージはかなり高コストなものとならざるを得ない。

以上のメッキ処理に対して、いわゆる「黒染め処理」が求められる事例がある。
「黒染め処理」というのは、ゲージ母材表面に化学的に四三酸化鉄層を形成させる処理のことである。メッキ処理の場合、そのメッキ層厚みはかなり大きなものになると言えるから、実は、その分、表面を丈夫に保つということも言えるし、あるいは、メッキ層が剥がれるということもあり得る。これに対して「黒染め」の場合、母材表面それ自体の化学変化であるから処理の前後を通じてゲージそれ自体の厚みは変わらないし、それなりには丈夫な被膜が形成されるものである。ただ、黒染め処理を行う場合でも、ゲージ測定部の測定面は黒染め被膜は除却されないと精度仕上げはできない。

以上、要するに、メッキであれ黒染めであれ、表面処理を行っても、ゲージ測定面は環境雰囲気にそのまま晒される、従って、こまめに防錆油を塗布する管理が必須であるという事情は変わらない。