分類:ハサミゲージの仕様

ハサミゲージの材質と防錆

JIS B 7420 で規定されているハサミゲージ材質は、「SK4相当もしくはそれ以上」とされている。実際に選択されるべき材質としては、SK4の焼き入れ硬度がHRc60~62であるところ、SK5でも実質的にHRc60が可能ということでSK5材でも規定違反とは直ちには言えないと解釈され、SK3であれば焼き入れ硬度はHRc62~64、SKS3ではHRc60~62である。
つまり、ハサミゲージの材質というものは、その可能な焼き入れ硬度との関連で規定されるものであり、何故焼き入れ硬度との相関で決まるかと言えば、その焼き入れ硬度がゲージ測定部の耐摩耗性を決定づけるという事情と結びつく。

この間の事情を要約すれば、炭素工具鋼の鋼種区分はそこに含まれるカーボン量により、そのカーボン量の違いが焼き入れ硬度の違いに現れ、焼き入れ硬度の違いがその耐摩耗性を左右する、ということなのである。

しかしながら、他方で、そこに含まれるカーボンによって発錆が誘発されるということだから、SK工具鋼をゲージ材料として使用する限りは、防錆の問題はどこまでも付きまとう。

SKS材の場合は、SK材をベースにいてにクロム(Cr)もしくはタングステン(W)を添加したもので、SK工具鋼に対してある程度の耐銹性が認められる。

防錆性を意識したゲージ素材の選択として、測定工具等に広く採用されているSUS420J2が可能である。
SUS420J2は、マルテンサイト系ステンレス鋼で、13%クロム鋼。焼き入れ可能上限硬度がHRc56。焼き入れ硬度が低いから耐摩耗性に劣るというわけではない。
他に、SUS440Cというステンレス鋼があって、この場合はステンレス鋼中最高の最高のHRc60以上の焼き入れ硬度を実現できるのだが、薄板が入手できないためにハサミゲージ素材としては実務性に欠ける。非常な難削材であるから、これを使ってハサミゲージ製作の技術・技能を確立しようと努力するよりは、ダイス鋼での将来を見通した方が信頼性は高いと思う。

あるいは、別途の選択として、精密金型材として一般的なダイス鋼が選択できる。
ダイス鋼の場合は多様な鋼種が製造されており、それぞれの材料特性が発揮されているようなのだが、ハサミゲージ素材として200mm/300mm幅の薄板剤が購入できるから便宜ではある。
12%クロム(Cr)、1.5%カーボン(C)にバナジウム(V)が添加されたものであるため、防錆性に優れ、焼き入れ硬度はHRc60~62(上限はHRc64か?)。但し、焼き入れ硬度が高い程好ましいとは言えない。

なお、SK工具鋼の場合のHRc60とダイス鋼の場合のHRc60とは、数字の上では同じ硬度値なのだが、その意味は違ってくるということは理解されないといけない。