分類:よもやま話

アメス・ポータブル硬度計

 現在では、焼き入れの硬度については全量検査を心掛けている。

 ゲージ屋ならどこさんでも同じだろうが、いちいち焼き入れ硬度を数値で検証しなくても、この色まで加熱しているからこういう焼き入れができていると分かるわけだから、いちいち測定機を持ち出して検証されるという事例はあまり見掛けたことはない。
 私らでも、そういうように教わってきたし、念のためにということで、いろいろと熱処理条件を変えて焼き入れサンプルを作り、専門業者さんの所でロックウェル硬度計で測定させてもらったことがある。
 通常なら、罫書き針の先で焼き入れ個所を罫書いてみる、ヤスリで擦ってみる、といった作業で異常は容易に発見できるのだが、正面から数値で管理すべきかどうかという問題に持ち込まれると、実は、扱いに困る。

 その「扱いに困った事例」というのが、ISO9001の受審に際してであった。
 (ISO9001殿関連での論議は、また別の機会を設けてするようにします。)

 問題は、ダイス鋼の焼き入れ。

 普通、工具鋼の場合、多少焼き入れ温度が高くなっていても、あるいは低くなっていたとしても、一定の温度幅の範囲内ではきちんとHRc60が保証される(そうなるように設計されている)。だから失敗がないし、あるいは、余程間の抜けたことであった場合以外には、失敗のしようがない。
 ところが、ダイス鋼の場合、その最適焼き入れ温度の「幅」というものが余程狭いようで、ちょっと過熱したり、加熱不足であったりすると、てきめんにその焼き入れ硬度が変動してしまう。
 焼き入れに失敗したからといって簡単に焼き戻しがすんなり出来るというわけではないので、いろいろと条件を探って、最適手順というものを確定し、かつ、その手順に習熟しないといけない。

 そのために、アメス社のポータブル硬度計(ロックウェル)を購入し、硬度測定をしているわけである。

アメス・ポータブル硬度計:図1

 硬度規準をどうするかという問題がある。ノギスの硬度ははSUS420J2だからHRc56。ブロックゲージはダイス鋼だからHRc64。この焼き入れ硬度というものは信頼できる。
 従って、硬度基準として採用できることになる。