分類:よくある質問
ブロックゲージの取扱い
ブロックゲージの取扱い
ブロックゲージの取扱いについては、一般的な教科書にも記述されているため、よくご承知のことと思います。
要領は、寸法を組み合わせる場合によく相互にリンギングさせることと、環境温度によく馴染ませてから比較測長を行うこと、に尽きるのですが、ここではハサミゲージのメーカーとしてどのような使用と保守管理を行っているかを説明します。
ブロックゲージの摩耗の問題
ブロックゲージをコンパレータ(比較測長器)の寸法基準としてのみ使用するならば摩耗の問題はあまり考える必要はないかも知れません。
しかしながら、ハサミゲージを製作するに際しては、ブロックゲージを基準にしてゲージ面の平面度・平行度・寸法値を創っていくわけですから、摩耗の問題がモロに関係してきます。
なぜ摩耗が問題になるかというと、最終のラップ工程においては、研磨砥粒を充分に除却していないまま加工面に残っている場合、その研磨砥粒を媒介にして加工面とブロックゲージ面とを摺り合わせすることになり、ブロックゲージ面が一挙に研磨されてしまいかねないからです。
ところで、十分に注意して加工面に研磨砥粒が残らないようにすれば問題が解決するかといえば、実は、そうとも言い切れません。
研磨砥粒がラップ工程においては浮遊していると考えれば充分に拭い去れば良いということになりそうですが、実際のラップ工程では、被加工面の材質硬度(焼き入れた炭素工具鋼でHRC60程度)と研磨砥粒の材質硬度の差が大きい場合、そしてかつ、研磨砥粒の粒度が微細な場合、研磨砥粒が被加工面に刺さり込んでいることがあります。
これは、ラッピングというプロセスにおいては、1)研磨砥粒が転がることで加工面を傷つけて研磨していく、という工程と、2)研磨砥粒が加工面に抉り込んで毟っていく、という工程とが複合して進展していっているわけですから、研磨砥粒が加工面に刺さり込んでいるままの状態が残ります。この状態でブロックゲージ面と摺り合わされれば、加工面をラッピング工具としてブロックゲージをラッピングすることになります。
このことは、研磨砥粒の種類によっては一様ではありませんが、ブロックゲージ摩耗の大きな原因となっています。
従って、ラッピング技法そのものに配慮を傾注することでこのような事態はかなりの程度で改善されることは明らかです。
ゲージ製作においては、程度の差はあれ、ブロックゲージの摩耗は回避しきれません。
摩耗は回避し得ないという前提に立って、ブロックゲージをどう取り扱えばよいかについて言えば、
1.ブロックゲージ面の全体を均等に使用するようにして、片減りや溝減りにならないようにする。
2.どれくらい摩耗しているかを判然とするようにする。
この後者の点で言えば、例えば、ブロックゲージ面に刻字されている側を外側にするという使用法があります。
その前提として、リンギングさせてブロックゲージを組み合わせる際に、片側に1mm(もしくは2mm)のものを、もう片側には0.01mm台(もしくは0.001mm台)の端数のブロックゲージを持ってくるようにして、特定のブロックゲージに摩耗が集中するようにする、という配慮が必要です。
教科書等では刻字面を内側にすることが推奨されていますが、外側にして刻字が摩滅してしまえば使用停止、ということは簡明ではあります。数字等は腐食液で刻入し直せば良いだけのことですから。
摩耗したブロックゲージは廃棄するかと言えばそうではありません。実務的には非常に貴重なものとなります。
なぜなら、組み合わせた名目寸法値よりも必ず小さな実寸法値となるブロックゲージですから、これをあてにゲージを製作している場合、取り過ぎると言うことがありません。実寸法値との差は最終仕上げ余地となり、製品であるゲージの精度を高めます。0.0001mm台で摩耗したブロックゲージというのは、その意味では、他に入手できない貴重品です。
(摩耗したブロックゲージは、表面状態が劣化していますから、充分なリンギング能力がありません。そこで、ラッピングをやり直してリンギング能力を回復させ、基準ブロックゲージとの寸法差と平行度・平面度をチェックして、新たな使命を付与するわけです。)
ブロックゲージの分業の問題
ゲージの製作においては、最低3セットで役割分担させることが望まれます。
1μmレベルが問題とならない「荒仕上げ」用、1μmレベルを問題とする「中仕上げ」用、0.1μmレベルが保証されている「最終仕上げ」用であり、これに別途「基準参照」用が加わります。製作用と検査用を分けようとすればセット数はもっと増えます。
もっとも、ゲージの検査成績書に0.1μmレベルまで掲記する必要があるかは問題で、摩耗していることの心配のないJIS1級ブロックゲージで1μmレベルがキチンと保証できることが掲記してあれば充分だとは思っています。
ISO9000’Sの時代となって、トレーサビリティの保証として「基準参照」用のブロックゲージを校正する必要があります。
これに対して、「最終仕上げ」用もしくは「検査」用ブロックゲージについては、メーカーとしての内部校正で充分だと考えていますが、これらについても認証機関の「校正証明書」を求められることがあります。当方では、内部校正に替えて(株)ツガミプレシジョンや(株)ミツトヨで検定を受け、検査成績書を交付してもらっています。何でもかんでも「校正証明書」がないと内部監査が充分でないということにはならないはずですが。
ブロックゲージの取扱い
ブロックゲージの取扱いについては、一般的な教科書にも記述されているため、よくご承知のことと思います。
要領は、寸法を組み合わせる場合によく相互にリンギングさせることと、環境温度によく馴染ませてから比較測長を行うこと、に尽きるのですが、ここではハサミゲージのメーカーとしてどのような使用と保守管理を行っているかを説明します。
ブロックゲージの摩耗の問題
ブロックゲージをコンパレータ(比較測長器)の寸法基準としてのみ使用するならば摩耗の問題はあまり考える必要はないかも知れません。
しかしながら、ハサミゲージを製作するに際しては、ブロックゲージを基準にしてゲージ面の平面度・平行度・寸法値を創っていくわけですから、摩耗の問題がモロに関係してきます。
なぜ摩耗が問題になるかというと、最終のラップ工程においては、研磨砥粒を充分に除却していないまま加工面に残っている場合、その研磨砥粒を媒介にして加工面とブロックゲージ面とを摺り合わせすることになり、ブロックゲージ面が一挙に研磨されてしまいかねないからです。
ところで、十分に注意して加工面に研磨砥粒が残らないようにすれば問題が解決するかといえば、実は、そうとも言い切れません。
研磨砥粒がラップ工程においては浮遊していると考えれば充分に拭い去れば良いということになりそうですが、実際のラップ工程では、被加工面の材質硬度(焼き入れた炭素工具鋼でHRC60程度)と研磨砥粒の材質硬度の差が大きい場合、そしてかつ、研磨砥粒の粒度が微細な場合、研磨砥粒が被加工面に刺さり込んでいることがあります。
これは、ラッピングというプロセスにおいては、1)研磨砥粒が転がることで加工面を傷つけて研磨していく、という工程と、2)研磨砥粒が加工面に抉り込んで毟っていく、という工程とが複合して進展していっているわけですから、研磨砥粒が加工面に刺さり込んでいるままの状態が残ります。この状態でブロックゲージ面と摺り合わされれば、加工面をラッピング工具としてブロックゲージをラッピングすることになります。
このことは、研磨砥粒の種類によっては一様ではありませんが、ブロックゲージ摩耗の大きな原因となっています。
従って、ラッピング技法そのものに配慮を傾注することでこのような事態はかなりの程度で改善されることは明らかです。
ゲージ製作においては、程度の差はあれ、ブロックゲージの摩耗は回避しきれません。
摩耗は回避し得ないという前提に立って、ブロックゲージをどう取り扱えばよいかについて言えば、
1.ブロックゲージ面の全体を均等に使用するようにして、片減りや溝減りにならないようにする。
2.どれくらい摩耗しているかを判然とするようにする。
この後者の点で言えば、例えば、ブロックゲージ面に刻字されている側を外側にするという使用法があります。
その前提として、リンギングさせてブロックゲージを組み合わせる際に、片側に1mm(もしくは2mm)のものを、もう片側には0.01mm台(もしくは0.001mm台)の端数のブロックゲージを持ってくるようにして、特定のブロックゲージに摩耗が集中するようにする、という配慮が必要です。
教科書等では刻字面を内側にすることが推奨されていますが、外側にして刻字が摩滅してしまえば使用停止、ということは簡明ではあります。数字等は腐食液で刻入し直せば良いだけのことですから。
摩耗したブロックゲージは廃棄するかと言えばそうではありません。実務的には非常に貴重なものとなります。
なぜなら、組み合わせた名目寸法値よりも必ず小さな実寸法値となるブロックゲージですから、これをあてにゲージを製作している場合、取り過ぎると言うことがありません。実寸法値との差は最終仕上げ余地となり、製品であるゲージの精度を高めます。0.0001mm台で摩耗したブロックゲージというのは、その意味では、他に入手できない貴重品です。
(摩耗したブロックゲージは、表面状態が劣化していますから、充分なリンギング能力がありません。そこで、ラッピングをやり直してリンギング能力を回復させ、基準ブロックゲージとの寸法差と平行度・平面度をチェックして、新たな使命を付与するわけです。)
ブロックゲージの分業の問題
ゲージの製作においては、最低3セットで役割分担させることが望まれます。
1μmレベルが問題とならない「荒仕上げ」用、1μmレベルを問題とする「中仕上げ」用、0.1μmレベルが保証されている「最終仕上げ」用であり、これに別途「基準参照」用が加わります。製作用と検査用を分けようとすればセット数はもっと増えます。
もっとも、ゲージの検査成績書に0.1μmレベルまで掲記する必要があるかは問題で、摩耗していることの心配のないJIS1級ブロックゲージで1μmレベルがキチンと保証できることが掲記してあれば充分だとは思っています。
ISO9000’Sの時代となって、トレーサビリティの保証として「基準参照」用のブロックゲージを校正する必要があります。
これに対して、「最終仕上げ」用もしくは「検査」用ブロックゲージについては、メーカーとしての内部校正で充分だと考えていますが、これらについても認証機関の「校正証明書」を求められることがあります。当方では、内部校正に替えて(株)ツガミプレシジョンや(株)ミツトヨで検定を受け、検査成績書を交付してもらっています。何でもかんでも「校正証明書」がないと内部監査が充分でないということにはならないはずですが。