分類:よもやま話

ラップ工具いろいろ

 右の写真は、使用しているラップ工具のいろいろです。

 「鋳物」を用いるということが一般的だと説明され、鋳物と言っても種類というのがさまざまにあって、そのうち「ネズミ鋳鋼」が最もラップ能力が高いとされています。しかしながら、なぜ「鋳物」かと言えば、その組織構成において微細な「穴」がありますから、その「穴」にラップ砥粒が嵌り込んでグリップされるということによります。ですから、同じ原理に立つ材質があれば、それはラップ工具として有効なものになるだろうという予測が立ちます。
 「鋳物」の場合でのこの「穴」では、#3000程度の砥粒粒径で最も保持力が高く、上限としては概ね#6000程度になります。従って、#8000~#20000の砥粒を使おうとする場合は、この「穴」がその粒径に相当すべき微細なものでなければならず、そのような工具素材は、改めていうまでもなく、鋳物以外に数多存在しているわけです。
 もちろん、この点はかなり以前から理解されていて、それぞれの作業者で工夫と創見が繰り返されてきましたから、何も改めて「私の創見である」などと主張できるものではありませんが、いろいろと幅広くテストを繰り返して、その知見に新たな経験を追加したという点はあるでしょう。
 つまりは、必ずしも「鋳物」にはこだわらないという「構え」がないと、工具の改善なり性能評価はかなり無理が生じます。

 ゲージの製作過程で、放電加工機でベースの加工を行い、後はその加工痕を消除すれば良いだけという製作工程であれば、ラップ・レベルということは余り意識されないかも知れません。
 しかしながら、ゲージ測定部に対する機械加工は、その部分に応力集中が必ずもたらされているという考え方に立てば、その部分を丁寧に除却しておかないと寸法変位の原因になるわけですから、仕上げるべき寸法値のかなり手前から手作業であたらないといけません。
 従って、0.01mmレベルでゲージ測定部を摺り下ろす工程、0.001mmレベルで摺り下ろすべき工程、最終的には、0.0002mmレベルでラップ仕上げを完結・完了させるべき工程・・・と、工程設計をどうするかはそれぞれの「事情」によりますが、全体を同じ同一のラップ工具で賄えるはずもないわけで、それぞれの状況に応じての「使い分け」が必要になります。

 ゲージ製作において最も時間を要し手間を要し緊張を強いられるのがこの仕上げ工程ですから、適切なラップ能力を発揮するべき工具の開発は、最も合理化効果の大きなものとなることは言うまでもありません。

 ラップという分野は、ラップ盤を使う「機械ラップ」が圧倒的な比重を占めていますから、ハンド・ラップという世界は、大量生産には不適なもので、改善・改良の余地のほとんどない伝承的な職人技で、しかもその修得には長年月を要する困難なものだという「決め込み」で語られることが多いのですが、だから、機械ラップでの到達水準をハンドラップの世界に如何に応用できるかという発想に傾いてきました。
 しかしながら、ハンド・ラップにはハンド・ラップに独自な「ロジック」がありますから、その「ロジック」の解明ということは大切な意味があります。
 金型屋さんの世界では「鏡面仕上げ」ということが普通に取り組まれているわけですから、ゲージ屋、もそれに遅れず並んで行かないといけないと思うわけです。

ラップ工具いろいろ:図1