分類:手技と手業の世界観
手業(てわざ)の世界
『手業の世界』という意味は、ここではハンドラップ技法のことをいいます。
ハサミゲージの最終仕上げはハンドラップによって完成され、機械力では不可能とされる世界である、という含意でもあります。
しかしながら、機械力では全く不可能なのか、理論的には可能なのではないだろうか、という疑問も寄せられそうです。
確かにその通りであって、手間と費用をつぎ込めば機械化は可能だと思います。
ただ、ハンドラップ技法を要請される世界があまりに狭小なため、せっかく機械を開発したとしても他に多く売れる見込みがありません。せいぜいが自用の機械となるため、採算がとれません。そんな手間と費用を掛けるくらいなら今まで通りハンドラップをしていれば済むわけです。斯くして、手業の世界は存続していくことになります。
つまり、伝承的な職人技の世界が、ローテクの最たるものの中の一つが、社会経済的な意味でもっとも効率的で経済的合理性に富んだものであるということを意味します。この視点に立って、私は仕事をしています。
平成20年、日立金属(株)が、従来のSK4(YG4)、SK3(YCS3)、SKS3(SGT)、SKS2(SA-1)の薄板材の生産から撤退され、同社生産の工具用鋼種はダイス鋼に限られることになりました。従って、ハサミゲージの材料素材としては、ダイス鋼に依らなければならないことになりました。
もちろん、従前よりハサミゲージ材質としてSK5を採用されているメーカーでは、変更点はないというだけのことになりますが、従前、SKS3(SGT)を採用してきた私のところでは、どうしてもダイス鋼製ゲージの製作に路線転換を果たしていかなければなりません。
ゲージ素材の変更が、ゲージ製作技術にどのような変容を迫るものであるか。
結論をスローガン的に言えば、遊離砥粒・湿式ラップから、固定砥粒・乾式ラップへの、ハンドラップ技術と技能の転換ということになります。
ハサミゲージの製作技術が確立した時点から、遊離砥粒・湿式ラップという技法が標準的な技術・技能であったわけですが、その技術・技能ではダイス鋼に対してはほとんど無効でありますから、むしろ、固定砥粒・乾式ラップの技術・技能が標準的なものとなって、従来の遊離砥粒・湿式ラップという技術・技能はSK5材に特化したごく限られた範囲でのみ通用する技術・技能であるという、技術・技能の位置づけが全面的に転換してしまうわけです。
このコーナーでは、この問題を含めて、ハンドラップ技術の総体について説明していきます。
なお、機械ラップの世界では、実務的には遊離砥粒・湿式ラップの方式しか成立し得ないわけですが、それはなぜかという問題も併せて論及されるべきと考えております。
各論文とも長文にわたらざるを得ないため、PDFファイル形式でHPに掲載します。
『手業の世界』という意味は、ここではハンドラップ技法のことをいいます。
ハサミゲージの最終仕上げはハンドラップによって完成され、機械力では不可能とされる世界である、という含意でもあります。
しかしながら、機械力では全く不可能なのか、理論的には可能なのではないだろうか、という疑問も寄せられそうです。
確かにその通りであって、手間と費用をつぎ込めば機械化は可能だと思います。
ただ、ハンドラップ技法を要請される世界があまりに狭小なため、せっかく機械を開発したとしても他に多く売れる見込みがありません。せいぜいが自用の機械となるため、採算がとれません。そんな手間と費用を掛けるくらいなら今まで通りハンドラップをしていれば済むわけです。斯くして、手業の世界は存続していくことになります。
つまり、伝承的な職人技の世界が、ローテクの最たるものの中の一つが、社会経済的な意味でもっとも効率的で経済的合理性に富んだものであるということを意味します。この視点に立って、私は仕事をしています。
平成20年、日立金属(株)が、従来のSK4(YG4)、SK3(YCS3)、SKS3(SGT)、SKS2(SA-1)の薄板材の生産から撤退され、同社生産の工具用鋼種はダイス鋼に限られることになりました。従って、ハサミゲージの材料素材としては、ダイス鋼に依らなければならないことになりました。
もちろん、従前よりハサミゲージ材質としてSK5を採用されているメーカーでは、変更点はないというだけのことになりますが、従前、SKS3(SGT)を採用してきた私のところでは、どうしてもダイス鋼製ゲージの製作に路線転換を果たしていかなければなりません。
ゲージ素材の変更が、ゲージ製作技術にどのような変容を迫るものであるか。
結論をスローガン的に言えば、遊離砥粒・湿式ラップから、固定砥粒・乾式ラップへの、ハンドラップ技術と技能の転換ということになります。
ハサミゲージの製作技術が確立した時点から、遊離砥粒・湿式ラップという技法が標準的な技術・技能であったわけですが、その技術・技能ではダイス鋼に対してはほとんど無効でありますから、むしろ、固定砥粒・乾式ラップの技術・技能が標準的なものとなって、従来の遊離砥粒・湿式ラップという技術・技能はSK5材に特化したごく限られた範囲でのみ通用する技術・技能であるという、技術・技能の位置づけが全面的に転換してしまうわけです。
このコーナーでは、この問題を含めて、ハンドラップ技術の総体について説明していきます。
なお、機械ラップの世界では、実務的には遊離砥粒・湿式ラップの方式しか成立し得ないわけですが、それはなぜかという問題も併せて論及されるべきと考えております。
各論文とも長文にわたらざるを得ないため、PDFファイル形式でHPに掲載します。