分類:よもやま話

定盤ラップ用定盤

 私らの日常的な仕事の範疇では、さまざまなものの面をラップするという仕事があります。
 その際には、「定盤ラップ」という方法、即ち、平面が丁寧に仕立てられた定盤上にラップ砥粒を均一に塗布し、その上でワークを動作させてワークの当たり面をラップする、という技法を利用します。
 通常は、ワーク材質が焼き入れ工具鋼(SK材)の場合、鋳物製の定盤にWA砥粒を用いてラップするという方法になりますが、この場合のラップ砥粒の粒度は#4000位が限度になります。鋳物製定盤で#6000WA砥粒を使うというのは、ほぼ無理なことになります。
 ダイヤモンド砥粒を使う場合、鋳物製定盤では弊害が大きいので、右の写真のような燐青銅製の定盤を自作しました。
 一般的には、銅製定盤にするとか、あるいは、ラップ盤用のラップ円盤として軟らかな金属を採用するということが試みられていますが、私の個人的な試みからいうと、これらの場合はダイヤモンド砥粒の「保持力」が弱いためあまり芳しい結果が出ません。燐青銅であると、この「保持力」が秀でていますから、0.5μmあるいはそれ以下の微細なダイヤモンド砥粒粒径のものに対しても有効な研磨力を発揮します。

 つまり、一般に理解されているような、ダイヤモンド砥粒での「遊離砥粒ラップ/湿式」としてラップが行われるのではなく、実質的には「固定砥粒ラップ/乾式」によってラップが作動しているという理解がないといけないわけです。

 使い方は、通例な定盤作りと同じで、
1.GC砥石等で平面を仕立てる。
2.アルカンサス砥石等で、ダイヤモンド砥粒+ラップ油で、定盤上に均等にラ  ップ砥粒が分布するように押し込む。
  この場合、定盤全体がごく僅かに凸面になるように仕立てられないと、ワー  ク面を平面にラップ仕上げすることが出来ません。
  よくある話として、定盤面が厳密に平面でないと、ワーク面を平面に仕立て  上げることが出来ないと教える向きもありますが、それは間違いです。
3.定盤上でワーク面を摺動させて、ラップ仕上げを行う。

 定盤面の面性状が、仕立て上げられるべきワーク面にどのように影響するかを弁えて作業に当たることが、仕上げ品質を決定づけます。
 従って、上に「GC砥石で平面を仕立てる」場合、その定盤が余りに柔弱な材質であれば、定盤としての面性状を維持していけませんから、定盤作りが極めて難しくなります。また、余り大きな定盤にしてしまうと、その定盤面の維持や手直しが大変な作業になってしまいますから、必要なだけの小さなものにしないといけない。写真のもので、80×105mmです。

 右の写真のものは、焼き物を整形したものの一面を、ダイヤモンド砥粒とプラスチックを練り込んだものを塗布し固めたもので加工面としたものです。
 一般市販品です。
 見た通り、固定砥粒ラップ/乾式のものになります。
 但し、精密なラップ作業にはちょっと力不足ではあります。

定盤ラップ用定盤:図1

燐青銅製ラップ定盤
10mm厚の鉄板に3mm厚の燐青銅版を貼り付けて作っています。  
10数ミリ厚の燐青銅版というのはかなり高価でその加工も(ゲージ屋にとっては)ちょっと厄介なものですが、3mm厚の板材なら問題なし。 

定盤ラップ用定盤:図2