分類:よもやま話
鏡面ラップの技法
ゲージの製作に際しては、目標とする寸法値が仕上がる時点で、その測定面が鏡面に仕上がっているという状態を目指すものですから、寸法を追い込む(摺り下ろす)という作業と鏡面に仕立て上げるという方法とが、言わば「連続性」を持っていないとはなはだ作業性が悪い。効率が悪いわけです。
従って、機械ラップの世界でのように、ラップ工程とポリッシュ工程を画然と区分するという方法は、ゲージ屋のハンド・ラップの世界では採用できるものではないわけで、ラップ工程=ポリッシュ工程という具合に、最終段階ではならないといけない。
従前、ゲージ屋は「鏡面仕上げ」ということを意識して、どのようにしてきたかというと、例えば、一つには、「空ラップ」という方法があります。最終的に、ラップ工具表面に付着してきたラップ砥粒を完全に払拭して、ラップ工具表面(鋳物)とワーク表面(焼き入れたSK材)とを直接に摺り合わせるわけです。両者間にさほどの硬度差がなければ、両面の高いところがそれぞれ相互に潰されていき、それなりには「艶出し」が出来るという方法です。二つには、よくある話ですが、「酸化クロム」を使ってラップするという方法です。いわゆる「磨きの工程」になるのですが、ラップ工具表面の物性に比べて酸化クロムは適切なものとは言い難いので、結構難しい作業になります。
ラップ加工でラップ砥粒を使うわけで、ラップという動作で必ずラップ痕がワーク表面に刻み込まれるわけですから、そのラップ痕をどう消除するか。原理的には、どんな微細な砥粒を採用したとしても、そのラップ痕は消除できないという結論になりそうです。もっとも、そのラップ痕の幅と深さがどれ位であれば「鏡面」として視認されるかは既に研究されて結論が出ていますから、それに相当する粒度でラップ加工をすれば、ごく当然に鏡面に仕上がるというわけです。
実務的には、例えば、0.1μm粒径のダイヤモンド砥粒でラップすればそれで決着してしまうわけですが、そういった結論に帰着させる前に、ゲージ製作者としてはもう少し考えなければならないことがあるだろうと思うわけです。
遊離砥粒ラップ/湿式の場合、ラップ工具表面にあるラップ砥粒の切り羽が一つの面上に揃うというわけではなく、ランダムに動きますから、必ずラップ痕が生じます。また、だからこそ、この技法でのラップ能力が高いわけです。
この場合、砥粒の切り羽の先端を一つの平面上に「揃える」ためにどうすればいいか?
精度の良い(適切な平面度を具備している)ラップ工具表面に、ラップ砥粒が濃密かつ均等に分布していて、それに対してラップ工具に加圧力を負荷して、ワーク表面に均一な力でラップ砥粒が押しつけられる。
こういうロジックで、ワーク表面が均等にラップされ、ラップ痕がそれぞれのラップ砥粒の働きで潰し合いがなされる。
0.5ないし1μm粒径のダイヤモンド砥粒を採用する場合、こういうことで「鏡面」が仕立て上げられるわけです。
通常よく説明されていることは、ラップ痕そのものの幅や深さを極小にするために、出来るだけ加圧力を小さく軽減させ(軟らかなラップ工具を使う)、かつ、ラップ痕をそれぞれ潰すためにはラップ工具を高速で動作させる(ラップ砥粒がワーク表面に接触する回数をいっそう増やす)、ということが紹介されますが、ここでは、それとは「真逆」な方法を指摘します。
遊離砥粒ラップ/湿式の方法で、ラップ砥粒の切り羽の先端を揃えるということは、つまりは、遊離砥粒ラップの方法で固定砥ラップを行うということを意味します。
そうであるならば、最初から固定砥粒ラップの方法を採用すれば、それ程も神経を使わずに済みますし、加圧力をいっそう大きく負荷するという「重作業」にならなくて済みます。従来から、固定砥粒ラップの方法の方が鏡面仕立てが容易であることは指摘されてきたことではあります。
固定砥粒ラップの場合、砥粒間の「距離」というものが固定されてしまっていますから、その砥粒間の離間距離が大きいとラップ痕が必ず生じるということになります。固定砥粒の固定方法で必ず弾性がありますから、この弾性による砥粒の切り込みが無視できないわけです。
従って、固定砥粒ラップの場合、その固定砥粒のラップ力でラップを行えば、その粒度に応じたラップ痕が生じるわけですが、それと同時に、ラップ工具表面にはワークをラップした後のラップ滓が蓄積されていきます。このラップ滓が、砥粒間の離間距離を埋めていくわけです。注意されるべきは、この段階で、ワーク表面とラップ工具表面上のラップ滓が、つまりこの両者は同じ物性を持っているものですから、表面を潰し合いするわけです。砥粒は切り込み力がありませんから、ラップ痕は生じないわけです。
固定砥粒ラップの場合、このラップ滓の蓄積を如何に除却するかが大問題となっているようです。
しかしながら、こういった「目詰まり状態」が、ハンド・ラップの場合は、鏡面仕立てのポイントになります。
ゲージの製作に際しては、目標とする寸法値が仕上がる時点で、その測定面が鏡面に仕上がっているという状態を目指すものですから、寸法を追い込む(摺り下ろす)という作業と鏡面に仕立て上げるという方法とが、言わば「連続性」を持っていないとはなはだ作業性が悪い。効率が悪いわけです。
従って、機械ラップの世界でのように、ラップ工程とポリッシュ工程を画然と区分するという方法は、ゲージ屋のハンド・ラップの世界では採用できるものではないわけで、ラップ工程=ポリッシュ工程という具合に、最終段階ではならないといけない。
従前、ゲージ屋は「鏡面仕上げ」ということを意識して、どのようにしてきたかというと、例えば、一つには、「空ラップ」という方法があります。最終的に、ラップ工具表面に付着してきたラップ砥粒を完全に払拭して、ラップ工具表面(鋳物)とワーク表面(焼き入れたSK材)とを直接に摺り合わせるわけです。両者間にさほどの硬度差がなければ、両面の高いところがそれぞれ相互に潰されていき、それなりには「艶出し」が出来るという方法です。二つには、よくある話ですが、「酸化クロム」を使ってラップするという方法です。いわゆる「磨きの工程」になるのですが、ラップ工具表面の物性に比べて酸化クロムは適切なものとは言い難いので、結構難しい作業になります。
ラップ加工でラップ砥粒を使うわけで、ラップという動作で必ずラップ痕がワーク表面に刻み込まれるわけですから、そのラップ痕をどう消除するか。原理的には、どんな微細な砥粒を採用したとしても、そのラップ痕は消除できないという結論になりそうです。もっとも、そのラップ痕の幅と深さがどれ位であれば「鏡面」として視認されるかは既に研究されて結論が出ていますから、それに相当する粒度でラップ加工をすれば、ごく当然に鏡面に仕上がるというわけです。
実務的には、例えば、0.1μm粒径のダイヤモンド砥粒でラップすればそれで決着してしまうわけですが、そういった結論に帰着させる前に、ゲージ製作者としてはもう少し考えなければならないことがあるだろうと思うわけです。
遊離砥粒ラップ/湿式の場合、ラップ工具表面にあるラップ砥粒の切り羽が一つの面上に揃うというわけではなく、ランダムに動きますから、必ずラップ痕が生じます。また、だからこそ、この技法でのラップ能力が高いわけです。
この場合、砥粒の切り羽の先端を一つの平面上に「揃える」ためにどうすればいいか?
精度の良い(適切な平面度を具備している)ラップ工具表面に、ラップ砥粒が濃密かつ均等に分布していて、それに対してラップ工具に加圧力を負荷して、ワーク表面に均一な力でラップ砥粒が押しつけられる。
こういうロジックで、ワーク表面が均等にラップされ、ラップ痕がそれぞれのラップ砥粒の働きで潰し合いがなされる。
0.5ないし1μm粒径のダイヤモンド砥粒を採用する場合、こういうことで「鏡面」が仕立て上げられるわけです。
通常よく説明されていることは、ラップ痕そのものの幅や深さを極小にするために、出来るだけ加圧力を小さく軽減させ(軟らかなラップ工具を使う)、かつ、ラップ痕をそれぞれ潰すためにはラップ工具を高速で動作させる(ラップ砥粒がワーク表面に接触する回数をいっそう増やす)、ということが紹介されますが、ここでは、それとは「真逆」な方法を指摘します。
遊離砥粒ラップ/湿式の方法で、ラップ砥粒の切り羽の先端を揃えるということは、つまりは、遊離砥粒ラップの方法で固定砥ラップを行うということを意味します。
そうであるならば、最初から固定砥粒ラップの方法を採用すれば、それ程も神経を使わずに済みますし、加圧力をいっそう大きく負荷するという「重作業」にならなくて済みます。従来から、固定砥粒ラップの方法の方が鏡面仕立てが容易であることは指摘されてきたことではあります。
固定砥粒ラップの場合、砥粒間の「距離」というものが固定されてしまっていますから、その砥粒間の離間距離が大きいとラップ痕が必ず生じるということになります。固定砥粒の固定方法で必ず弾性がありますから、この弾性による砥粒の切り込みが無視できないわけです。
従って、固定砥粒ラップの場合、その固定砥粒のラップ力でラップを行えば、その粒度に応じたラップ痕が生じるわけですが、それと同時に、ラップ工具表面にはワークをラップした後のラップ滓が蓄積されていきます。このラップ滓が、砥粒間の離間距離を埋めていくわけです。注意されるべきは、この段階で、ワーク表面とラップ工具表面上のラップ滓が、つまりこの両者は同じ物性を持っているものですから、表面を潰し合いするわけです。砥粒は切り込み力がありませんから、ラップ痕は生じないわけです。
固定砥粒ラップの場合、このラップ滓の蓄積を如何に除却するかが大問題となっているようです。
しかしながら、こういった「目詰まり状態」が、ハンド・ラップの場合は、鏡面仕立てのポイントになります。