分類:よもやま話

「鏡面」いろいろ

 ハサミゲージ製作の場合、鏡面に仕立て上げるべきはワークの「内側」ですから、どうしてもハンドラップの技術・技法でどうすべきかという話に収束されてしまいます。しかし、ワークの「外側」について鏡面にすべし、という話であれば、別にハンドラップでなければならないという話に限定されるわけではない。

 写真のものは、そういう用途に開発・販売されているもので、#2500相当程度のダイヤモンド砥粒を練り込んだラップ工具を使ってラップしたものです。

 いわゆる「定盤ラップ」の技法に拠りますが、遊離砥粒ラップ/湿式ではなくて、固定砥粒ラップ/乾式になります。
 もちろん、このレベルだとラップ痕は残りますが、強引に「鏡面だ」と言い張れば、「鏡面と認めましょう」という話になるかも知れない。
 中途半端に「研磨シート」を使うよりは、仕上がり面の面性状は良好なものになりますし、何よりも、ラップ効率が良い。

 以前お付き合いのあったフライス屋さんで、フライス加工の後、その切削痕を消去して欲しいと顧客から要求されたそうです。
 平面研削盤で研削すれば済む程度の話だったはずですが、設備を準備していなければ人力でやる以外にはない。#240~#400程度のWA砥石で面を摺れば解決できるはずなのですが、(ゲージ屋の世界でも、#600程度のWA砥石で研削痕を消除してあればそれでOKというものは多いです)、残念なことに、その砥石をハンドリングする技術・技能がない。
 研磨材屋さんに教えを請うと、いわゆる「不織布」を売りつけられたそうで、手間ばかり掛かって、その割には、「縁ダレ」が生じて役に立たないと嘆いておられました。

 研磨材屋さんにしても、その用途・目的が奈辺にあるか、本人の技術・技能の水準がどうか、何を経験してきたか、で相談に対する回答が大きく異なってくるはずなのですが、その問題の立て方が的を射てないと「生煮えな話」に終始してしまいます。

 鏡面にまで至らなくても、切削痕を消去する、研削痕を消除するという顧客要求は大きく拡がっていくだろうと思います。
 今まで「ナマ材」の加工で良かったものが、焼き入れ処理したものが求められ、その「黒皮」の除却に際して「研磨加工」が求められるという筋書きです。
 アルミ材の加工で、切削痕を消せと言われたという話は、よく聞きました。

 ラップ盤が、大きなものから卓上の小さなものまで多種多様に開発され販売されてきている昨今ですが、量産品でない場合、あるいは、ラップ盤には載せ難い形状のものである場合、どうしても「手業」で対処できるように技術・技能が準備されていないと、具合が悪い。
 機械ラップを掛けた場合、スクラッチが生じてワークをぶち壊してしまった場合なんかでは、その是正は手作業に拠らなければならないはずです。

 私なんかでも、いろいろなレベルでの「磨き」「ラップ」を試みてきています。

「鏡面」いろいろ:図1