分類:ハサミゲージの世界

材質について

「JIS B 7420]では、ゲージ材質として、ハサミゲージの場合はSK4もしくは同等以上の材質が求められています。
一般的にはSK4/SK3/SKS3が採用されてきました。
ただ、従前、これらの材料を供給してきた日立金属(株)が2008年に生産撤退をしてしまいましたから、それぞれゲージ・メーカでは材料のストックを有し ているとは言え、いずれそれが払底してしまった後は、一般的な焼き入れ可能な鋼材としてのSK5か、あるいはダイス鋼しか入手できなくなります。

 ユーザーのゲージ使用条件とか、被測定ワークの物性によって、いわゆる炭素工具鋼・合金工具鋼以外に、ステンレス鋼の採用が考慮されて良い問題です。

SUS420J2は、いわゆる「マルテンサイト系ステンレス鋼」として、ノギスの他、多くの測定工具等で採用されている材料です。
「マルテンサイト系ステンレス鋼」という意味は焼き入れ硬化処理が可能なステンレス鋼だという意味で、最高硬度HRc56が可能です。通常の炭素鋼(例え ば、SK5)の場合はHRc58程度が上限になりますが、それよりも硬度が低くて大丈夫かという疑問が寄せられますが、測定工具として用いる場合、その焼 き入れ硬度だけの問題に限られず、その耐摩耗性能との関連で判断されるべき問題で、13%クロム鋼であSUS420J2の場合、例えばSK5よりも耐摩耗 性は優越していると言えます。

SUS420J2以外のステンレス鋼としてSUS440Cというものがあります。
ステンレス鋼として最高の焼き入れ硬度が保証される(HRc62位とされています)ものですが、ハサミゲージ材料としては4mm/5mm厚の薄板材の入手 が困難であるという点や、ダイス鋼でゲージ製作が出来るならその方が有利という事情があって、あまり普及はしないと思えます。

ダイス鋼(SKD11)は、既に金型材として広く採用されている材料ですから、測定工具用素材としては申し分ありません。SKS3に対して「3倍」の耐摩耗性能という利点は、長期にわたるゲージの活用を保証するものでありますから、私も積極的にダイス鋼製ゲージへの転換を図っております。
現在は、ゲージの製作寸法として、JIS製作公差の下限ジャストに製作するように要請される場合を中心に、製作すべき寸法精度を保証する面粗度の問題等、ダイス鋼で製作する場合のメリットをアピールしています。
いわゆる「スチール製ブロックゲージ」の材質がダイス鋼であるわけですが、具体的なダイス鋼鋼種は特定できません(ブロックゲージのメーカーからは非公開です)が、熱膨張率がブロックゲージとワークであるハサミゲージとでほぼ一緒というのは、製作時の困難さを緩和します。

材質について:図1

SUS420J2製ゲージ。
これも、JISに準拠した仕様です。 

材質について:図2

SUS420J2製の大経用外径ゲージ。 

材質について:図3

同じく、SUS420J2製ゲージ。