分類:ハサミゲージに関するJIS規格の話
材質について
JISの規定によれば、ハサミゲージの材質は「SK4相当もしくはそれ以上」と定められている。
具体的には日立金属(株)のYG4が採用されてきた。
YG4を採用する場合、次項で説明するように、焼き入れ処理を行うとHRc60が実現される。別な言い方をすれば、HRc60の焼き入れ硬度が保証されるように作られた鋼種であるということなのである。HRc60の焼き入れ硬度に於いて、その材質として最高の性能品質が実現されるということである。
SK4以上の鋼種として、SK3やSKS3が採用される。
SKS3(日立金属(株):SGT)は、リングゲージや栓ゲージで採用されるべき鋼種としてJISに規定されているのだが、これは世情では「耐磨不変鋼」と指称されているように、焼き入れ歪みが比較的小さく、焼き入れ後の経年変化が比較的小さいと認められていることによる。ここで「比較的」と断っているのは、秋入れ歪みはやり免れがたいし、経年的な変化がないとは言えないからである。
ハサミゲージでSKS3が採用される理由は、やはりSK4と比べて耐摩耗性に優れているとみなされるからで、SK4に対して3割程度の耐摩耗性の向上が図られていると評価されている。
SK3(日立金属(株):YCS3)の場合、同じSK3種鋼といいながら、その焼き入れ硬度がHRc64に至るからで、ハサミゲージでの測定部のハンドラップ仕上げではかなりな労苦を強いられる。従って、SK3が要求された場合、むしろSKS3で製作するという判断がゲージ屋ではなされることになる。
日立金属(株)が製造するSK工具鋼では、いわゆる「球状化焼き鈍し」がなされていて、素材としての形状安定性に優れ被加工性にも優れた材料であるから、ゲージとして製作される素材としては最も相応しいものであると言える。
しかしながら、現実として、日立金属(株)では既にSK工具鋼(板材の場合。丸材については製造が継続されている)の製造から撤退されているから、従前通りの材料入手が出来なくなっている。
他の製鋼メーカーによる代替製造がなされているのかどうかはよく分からないでいる。
SK工具鋼製のハサミゲージという「原則」から離れて、別な鋼種が活用できないかが以前から問われてきていた。
一つには、SK工具鋼はカーボン量が高いから、発錆を誘い込みやすい。 ゲージ測定面で発錆すればそのゲージは廃棄を免れないというのが原則であるから、ゲージの保管(保全)にかなり細心の注意が強いられる。
二つには、幾らSGTが「耐磨不変鋼」と入ってみても、ゲージを適用すべきワークの材質や加工性状によっては、その耐摩耗性に不足するという事態があるということである。机上で考えると、ハサミゲージの測定部を、通り部はワークは通過し、止まり部で止まるという理屈であるから、ゲージ測定面とワーク表面が直接擦り合わされることはないと考えられそうなのだが、実際の使い方は、通り部を通過したワーク軸径に対して、止まり部で止まった状態で幾分押し込むような力を加えながら軸径に沿って半周回すという検定方法が採られる。ゲージの素材が柔弱であれば、止まり部を押し込んだ場合にそのままワーク軸径を掬い込んでしまうということになるし、半周回すことによってワーク表見とゲージ測定面が直接摺り合わされてしまう。「総焼き入れゲージ」というのはゲージ素材の「弾性」を小さくしようという目的もあるのだが、その素材の「耐摩耗性」に変わることがないから、根本的な解決や改善は果たしがたい。
このような問題点を踏まえて、SK工具鋼以外にゲージに採用できる鋼種を考えた場合、耐摩耗性ということを考えれば刃物用に活用されている鋼種に着目して、耐銹性を考えるとステンレス鋼(SUS420J2)が、耐摩耗性と素材強度を考えるとダイス鋼(SKD11)が、その候補となる。
これらの選択は、別段、JIS規定に違反するというものではない。
鉄鋼材料の教科書等を参照すると、さまざまな鋼種が開発され製造販売されていることが分かるのだが、それらのどれでも一般消費者として購入できるかというと、必ずしも購入は容易ではない。受注生産であって、かなりまとまった量でなければ製造に応じてもらえないことはむしろ自明な事情であるだろう。
板厚3mm~8mm(1mmとび)程度の薄板材で、いわゆる「ゲージ鋼板仕様(幅:200mm/300mm、長さ2000mm)のものとして提供されるかどうかがハサミゲージ製作に当たっては必須の素材条件になる。鋼種の要件のみが問題になるのではない。
JISの規定によれば、ハサミゲージの材質は「SK4相当もしくはそれ以上」と定められている。
具体的には日立金属(株)のYG4が採用されてきた。
YG4を採用する場合、次項で説明するように、焼き入れ処理を行うとHRc60が実現される。別な言い方をすれば、HRc60の焼き入れ硬度が保証されるように作られた鋼種であるということなのである。HRc60の焼き入れ硬度に於いて、その材質として最高の性能品質が実現されるということである。
SK4以上の鋼種として、SK3やSKS3が採用される。
SKS3(日立金属(株):SGT)は、リングゲージや栓ゲージで採用されるべき鋼種としてJISに規定されているのだが、これは世情では「耐磨不変鋼」と指称されているように、焼き入れ歪みが比較的小さく、焼き入れ後の経年変化が比較的小さいと認められていることによる。ここで「比較的」と断っているのは、秋入れ歪みはやり免れがたいし、経年的な変化がないとは言えないからである。
ハサミゲージでSKS3が採用される理由は、やはりSK4と比べて耐摩耗性に優れているとみなされるからで、SK4に対して3割程度の耐摩耗性の向上が図られていると評価されている。
SK3(日立金属(株):YCS3)の場合、同じSK3種鋼といいながら、その焼き入れ硬度がHRc64に至るからで、ハサミゲージでの測定部のハンドラップ仕上げではかなりな労苦を強いられる。従って、SK3が要求された場合、むしろSKS3で製作するという判断がゲージ屋ではなされることになる。
日立金属(株)が製造するSK工具鋼では、いわゆる「球状化焼き鈍し」がなされていて、素材としての形状安定性に優れ被加工性にも優れた材料であるから、ゲージとして製作される素材としては最も相応しいものであると言える。
しかしながら、現実として、日立金属(株)では既にSK工具鋼(板材の場合。丸材については製造が継続されている)の製造から撤退されているから、従前通りの材料入手が出来なくなっている。
他の製鋼メーカーによる代替製造がなされているのかどうかはよく分からないでいる。
SK工具鋼製のハサミゲージという「原則」から離れて、別な鋼種が活用できないかが以前から問われてきていた。
一つには、SK工具鋼はカーボン量が高いから、発錆を誘い込みやすい。 ゲージ測定面で発錆すればそのゲージは廃棄を免れないというのが原則であるから、ゲージの保管(保全)にかなり細心の注意が強いられる。
二つには、幾らSGTが「耐磨不変鋼」と入ってみても、ゲージを適用すべきワークの材質や加工性状によっては、その耐摩耗性に不足するという事態があるということである。机上で考えると、ハサミゲージの測定部を、通り部はワークは通過し、止まり部で止まるという理屈であるから、ゲージ測定面とワーク表面が直接擦り合わされることはないと考えられそうなのだが、実際の使い方は、通り部を通過したワーク軸径に対して、止まり部で止まった状態で幾分押し込むような力を加えながら軸径に沿って半周回すという検定方法が採られる。ゲージの素材が柔弱であれば、止まり部を押し込んだ場合にそのままワーク軸径を掬い込んでしまうということになるし、半周回すことによってワーク表見とゲージ測定面が直接摺り合わされてしまう。「総焼き入れゲージ」というのはゲージ素材の「弾性」を小さくしようという目的もあるのだが、その素材の「耐摩耗性」に変わることがないから、根本的な解決や改善は果たしがたい。
このような問題点を踏まえて、SK工具鋼以外にゲージに採用できる鋼種を考えた場合、耐摩耗性ということを考えれば刃物用に活用されている鋼種に着目して、耐銹性を考えるとステンレス鋼(SUS420J2)が、耐摩耗性と素材強度を考えるとダイス鋼(SKD11)が、その候補となる。
これらの選択は、別段、JIS規定に違反するというものではない。
鉄鋼材料の教科書等を参照すると、さまざまな鋼種が開発され製造販売されていることが分かるのだが、それらのどれでも一般消費者として購入できるかというと、必ずしも購入は容易ではない。受注生産であって、かなりまとまった量でなければ製造に応じてもらえないことはむしろ自明な事情であるだろう。
板厚3mm~8mm(1mmとび)程度の薄板材で、いわゆる「ゲージ鋼板仕様(幅:200mm/300mm、長さ2000mm)のものとして提供されるかどうかがハサミゲージ製作に当たっては必須の素材条件になる。鋼種の要件のみが問題になるのではない。