分類:ハサミゲージの仕様
ハサミゲージの総焼き入れ
リングゲージや栓ゲージなどでは、昔は高周波焼き入れ等によってゲージ測定面だけに焼き入れ処理を施すということがなされてきたわけなのだが、現在では、総焼き入れ処理が一般的であるらしい。
ハサミゲージ(あるいは、板ゲージ一般)においても、総焼き入れが要求される場合がある。この場合に期待されていることは、一つは、ゲージ母材が柔弱であると考えられるところ、その材質強化のために総焼き入れを行う、二つには、総焼き入れを行った上でサブゼロ処理を併用すればゲージの寸法精度の狂い(「経年変化」指称されるようであるが)が禁抑され得る、といった点であることのようである。
私がゲージ屋稼業に従事し始めた頃、板ゲージの焼き入れ処理に際しては、焼き入れ硬化が必要な部分に出来るだけ局限して求められるべき焼き入れ硬度を実現するということを叩き込まれたものである。
つまり、焼き入れをしない部分は、材料特性として「球状化焼き鈍し」がなされていて非常に安定したものとされており、焼き入れ処理というのはその部分の内部応力の蓄積原因になるから、できる限り焼き入れ範囲が局限されないと経年変化の原因を抱え込むことになる。従って、焼き入れ硬化部分を可能な限り限定された範囲に留め、焼き入れ処理後に「焼き戻し」を丁寧に行うことによって、事後の経年変化原因が緩和・抑制される、というわけである。
実際、局部焼き入れしたゲージについて、よく寸法変化がもたらされるという事例は、今まで経験したことはない。一般的にもそう理解されているはずなのである。
熱処理を考える場合、研究書等では、ワークの基準寸法を25mmとするところから始まって、SK工具鋼の場合、その加熱から冷却の際の冷却速度が焼き入れ硬度をもたらすとされている。
冷却においては、外辺部は急速に冷却されるが、ワークの芯部の冷却は遅行する。ワークの熱伝導率の問題に関わるのだが、ワークの外辺部においてマルテンサイト化が充分に進行したとしても、芯部にあっては、充分なマルテンサイト化が実現しないということになる。これがいわゆる「残留オースティナイト」問題の原因・理由になるだろう。
ハサミゲージの場合、その板厚というものは4mm~8mmだから、冷却の不均等さなり遅効性が大きく影響するということは考えにくい。
従って、ハサミゲージの場合の総焼き入れというものは余り意味がないと思えるのだが、しかしながら、この問題に対するこだわりの原因・理由というものには、「総焼き入れゲージは《剛体》である」という誤解があるのではないかと思われる節がある。つまり、総焼き入れゲージにして、サブゼロ処理によって残留オースティナイトのマルテンサイト化を徹底すれば、それはもう未来に向けて寸法変化が生じない「剛体ゲージ」になるだろうというわけである。
しかしながら、サブゼロ処理というのは、SK工具鋼の結晶レベルの問題であり、内部残留応力を解消する方法ではない。焼き入れに際して生じる素材の「曲がり」「捻れ」「反り」といった変形結果を解決するために、大きな力を加えて補正するとか、平面研削盤で平面を再仕立てをするとかの外部の力が加わることで、このことが将来的な寸法変位や形状変化の原因にはならないと考えることはできないだろうと思うのである。
もちろん、総焼き入れハサミゲージにするべき理由なり利点というものがユーザー要求としてあるならば、その要求に応えるべき責務はメーカー側にあることは間違いないところなのだが。
リングゲージや栓ゲージなどでは、昔は高周波焼き入れ等によってゲージ測定面だけに焼き入れ処理を施すということがなされてきたわけなのだが、現在では、総焼き入れ処理が一般的であるらしい。
ハサミゲージ(あるいは、板ゲージ一般)においても、総焼き入れが要求される場合がある。この場合に期待されていることは、一つは、ゲージ母材が柔弱であると考えられるところ、その材質強化のために総焼き入れを行う、二つには、総焼き入れを行った上でサブゼロ処理を併用すればゲージの寸法精度の狂い(「経年変化」指称されるようであるが)が禁抑され得る、といった点であることのようである。
私がゲージ屋稼業に従事し始めた頃、板ゲージの焼き入れ処理に際しては、焼き入れ硬化が必要な部分に出来るだけ局限して求められるべき焼き入れ硬度を実現するということを叩き込まれたものである。
つまり、焼き入れをしない部分は、材料特性として「球状化焼き鈍し」がなされていて非常に安定したものとされており、焼き入れ処理というのはその部分の内部応力の蓄積原因になるから、できる限り焼き入れ範囲が局限されないと経年変化の原因を抱え込むことになる。従って、焼き入れ硬化部分を可能な限り限定された範囲に留め、焼き入れ処理後に「焼き戻し」を丁寧に行うことによって、事後の経年変化原因が緩和・抑制される、というわけである。
実際、局部焼き入れしたゲージについて、よく寸法変化がもたらされるという事例は、今まで経験したことはない。一般的にもそう理解されているはずなのである。
熱処理を考える場合、研究書等では、ワークの基準寸法を25mmとするところから始まって、SK工具鋼の場合、その加熱から冷却の際の冷却速度が焼き入れ硬度をもたらすとされている。
冷却においては、外辺部は急速に冷却されるが、ワークの芯部の冷却は遅行する。ワークの熱伝導率の問題に関わるのだが、ワークの外辺部においてマルテンサイト化が充分に進行したとしても、芯部にあっては、充分なマルテンサイト化が実現しないということになる。これがいわゆる「残留オースティナイト」問題の原因・理由になるだろう。
ハサミゲージの場合、その板厚というものは4mm~8mmだから、冷却の不均等さなり遅効性が大きく影響するということは考えにくい。
従って、ハサミゲージの場合の総焼き入れというものは余り意味がないと思えるのだが、しかしながら、この問題に対するこだわりの原因・理由というものには、「総焼き入れゲージは《剛体》である」という誤解があるのではないかと思われる節がある。つまり、総焼き入れゲージにして、サブゼロ処理によって残留オースティナイトのマルテンサイト化を徹底すれば、それはもう未来に向けて寸法変化が生じない「剛体ゲージ」になるだろうというわけである。
しかしながら、サブゼロ処理というのは、SK工具鋼の結晶レベルの問題であり、内部残留応力を解消する方法ではない。焼き入れに際して生じる素材の「曲がり」「捻れ」「反り」といった変形結果を解決するために、大きな力を加えて補正するとか、平面研削盤で平面を再仕立てをするとかの外部の力が加わることで、このことが将来的な寸法変位や形状変化の原因にはならないと考えることはできないだろうと思うのである。
もちろん、総焼き入れハサミゲージにするべき理由なり利点というものがユーザー要求としてあるならば、その要求に応えるべき責務はメーカー側にあることは間違いないところなのだが。