分類:ハサミゲージの世界

形状安定性の問題

ゲージ材料は、製鋼所で圧延・焼鈍された時点で最も結晶状態が良好であり、それを切断・切削・研削・打撃・曲げ・・といった外力が加わるごとに《内部応力》が蓄積されていきます。内部応力がどれくらい蓄積されているとしても、それが全体としてバランスされていれば変化原因とはなりませんが、実際には不均衡さが残り、バランスがとれるまで形状変化が継続します。
また、測定部の焼き入れ硬化処理に伴う《熱応力》と部分的な材料物性の変化に伴う《組織応力》があります。

炭素工具鋼の場合、物理的な外力を被ることに起因する《内部応力》と、焼き入れ硬化処理に伴う《熱応力》とが、形状安定性を損なう主要な変化原因と言えます。
《内部応力》に原因する変化の方向性は様々ですが、《熱応力》に原因する変化の方向性は、その焼き入れ部分が収縮する方向に作用します。他方、焼き入れ部分のマルテンサイト化による変化は、体積膨張です。
ゲージ製作において材料加工と焼き入れが必須である以上応力の問題は回避できませんが、それは材料物性における物理法則であるわけですから、《内部応力》を緩和・減殺し、《熱応力》を緩和・解放する方策は存します(というより、既に研究実証されてきた問題です)。
ゲージ製作工程に於いてそれらがどのように配慮され、実施・履行されているかはゲージそれ自体の品質保証の問題に帰結します。