分類:ハンドラップ技法について

ラップ技法の位置付け

ハサミゲージの製作工程においては、仕立て上げるべき寸法に対して概ね0.02mm手前まで「箱バイス」を使ってWA砥石で研削し、残りの部分が「仕上げ代」になる。
この0.02mmの「仕上げ代」によって、仕立て上げ面(ハサミゲージ測定部面)の「倒れ」や「捻れ」、「丸み」といった事象を解消して平面と寸法とを仕立て上げるのだが、この「仕上げ代」ができるだけ小さく抑制できると、全体としての仕上げ効率が良くなる。他方、「仕上げ代」が足りないと、ゲージの仕立て上げに際して寸法が製作公差から逸脱してしまうから、ぎりぎりまでゲージの「仕上げ代」を小さくすると却って仕上げに手間取ってしまう。
従って、一応は充分な「仕上げ代」を残しながら、いかに手早く、効率的にその「仕上げ代」分を除却できるかということを考えた方が実務的だと言える。

そこで、「箱バイス」で0.02mm残したものを、つまり、#600程度のWA砥石で下仕上げした状態のものを、#1200程度のWA砥石でいわゆる「砥石ラップ」で0.003~0.005mmまで仕上げ代分を研磨する。
「砥石ラップ」というのは、別のところで説明している「固定砥粒ラップ/乾式」の原理と同じ加工原理であって、特徴的には、#600程度で下仕上げされたワーク面に対して、#1200のWA砥石でラップするところから、一つには、加工面がかなり平滑になり、面の「倒れ」「捻れ」「丸み」といった事象をかなりの程度改善される。二つには、手(指先)による加圧力によって研磨作業がなされるところから、表面凹凸の出方が小さい、・・・といった利点があるのだが、何よりもの利点は、加工能力が「遊離砥粒ラップ/湿式」よりも遙かに大きなことである。

この考え方は、ハサミゲージ製作の原則的な実務作業であると言って良く、「遊離砥粒ラップ/湿式」でも「固定砥粒ラップ/乾式」でも、仕立て上げるべき寸法に対する仕上げ代が3~5μmのところから行使される技法なのであって、そこに至るまでの加工技法についてはいろいろと工夫されて良い問題である。