分類:よもやま話

仕上げ工程とブロックゲージ

 ハサミゲージの仕上げ工程は、ブロックゲージとの比較測長で、平面度・平行度・寸法値を追い求めていくわけなのだが、そのブロックゲージの信頼性が劣化していると何の意味もないことになる。
 規準になるブロックゲージは、当然なことながら、ブロックゲージ・メーカーに委託して定期的に校正しているわけなのだが、ブロックゲージを使って仕上げをするということは、ブロックゲージがどんどん磨損していくことを意味するから、校正時の寸法精度がどれくらいの期間維持されているのかという問題も併せて問われることになる。

 当方では、最終仕上げに至るまでは、つまり仕上げるべき寸法値の1μm手前まで、JIS2級のブロックゲージ・47個セットを使う。もちろん、1.001-1.009の9個セットを併用し、併せて、超硬製保護ブロックゲージ1mmセットを使うことも勿論である。なぜ1μm手前かと言えば、2級ブロックゲージは、プラス・マイナスの両方向での公差が認められているため、ブロックゲージの貼り合わせ個数によっては、公称寸法よりも大きな組み合わせになっている場合があり得る。もっとも、この点は購入当初の場合での問題であって、それ以降は、使用頻度に従って磨損が進行していくから、組み合わせの公称寸法を上回るという心配はなくなる。

 このように、ブロックゲージ・セットを分けるということを試みたのは、ダイヤモンド砥粒を使った遊離砥粒ラップ/湿式の技法を採用してハサミゲージを製作していた当時、あまりにもブロックゲージの損耗が激しいからであった。
 もちろん、超硬製保護ブロックゲージを両サイドに貼り付けるのだが、20個~30個も仕上げれば、それが2μm程は磨滅するわけで、タチの悪いことには0.5μm粒径砥粒を採用していたから、磨損情況が視認できない。
 超硬素材というのは、ダイヤモンド砥粒に対しては耐性が無く、簡単に磨滅していく。
 もっとも、ダイヤモンド砥粒の研磨力を最大限に引き出せるように道具立てを考案しているわけだから、ゲージ面を効率よくラップできるということは、ブロックゲージの側も効率よくラップしているということを意味している。

 遊離砥粒ラップ/湿式の方式を放棄して固定砥粒ラップ/乾式の方式に移行して以降は、ブロックゲージの磨損は激減したわけで、それでも、3年間の校正周期の期間中で、0.3μm程度の磨損が検知される。従って、このデータに従えば、ブロックゲージの磨損ということが回避できないならば、特定のブロックゲージに磨損が集中するような使用法を考え、同時に、少なくとも1年間を経過する以前には新しいブロックゲージと差し替えるということで、全体としてのブロックゲージ・セットの精度条件は維持されるわけである。

 2級ブロックゲージ・セットの活用は、それが最終寸法仕上げの手前の段階だから、例え磨損情況を看過してしまっていたとしても、それは、まだ残りの仕上げ代寸法が予期したものよりも大きかったという結果をもたらすことでしかないから、「寸法を取り過ぎて大きな寸法に仕上がった」という「失敗」に結果するものではない。
 もっとも、「1μmの仕上げ代が残されているはずが、2μm残っていた」というと最終仕上げ(鏡面ラップ工程)に難儀するから、この2級ブロックゲージ・セットも、あまり磨損が進行してしまう前に新品と差し替えないといけない。

 以上の点が、ISO9001でいう「測定機器の監視」の内容になっている。

仕上げ工程とブロックゲージ:図1

 

仕上げ工程とブロックゲージ:図2

 クロダ・プレシジョンの2級ブロックゲージ・47個セット。10進法通りに組み合わせることが出来るので、貼り間違いが避けられる。
 私が照会したときは、このブロックゲージ・セットの「校正証明書」の証明方法が、「47個全体が2級の公差範囲内に収まっている」旨の証明であるらしく、個別の実寸法値が証明されることにはならないと説明された。
 それで、ちょっと困ってしまったのだが。
 これを選んだのは、最終寸法仕上げと検査のためにJIS1級・103個セットにツガミ・プレシジョン製のブロックゲージを採用しているため、一目で判別・区分できるようにメーカーを分けたのだった。